新しい接客の形、オンライン接客。
人と人の繋がり方は多様化しており、対面接客でのコミュニケーションが主だった時代から現在大きな変革を遂げています。
オンライン化することで、利便性においても感染リスクにおいてもメリットが多い反面、先進的であるオンライン接客を成功させるためにはコツが必要になります。
新しいものへの抵抗を抑え、いかにオンライン接客の便利さ、快適さを顧客に浸透させることができるか。
オンライン接客成功のコツをお伝えします。
オンライン接客を成功させるコツ
オンライン接客は、ただ導入するだけで経営状況がよくなるわけではありません。
むしろ目的や運用方法を明確にした上で導入しないと費用がかさむ一方で成果には繋がらないと、デメリットだけを受けてしまいます。
ここからはオンライン接客を成功させるためのコツを紹介していきます。
オンライン接客を成功させるコツは以下の通りです。
- 導入の目的を明確にして計画を立てる
- 利用者側の負担を最小限にする
- 事前の情報収集を欠かさない
- サービス提供側はツールに慣れ親しんでおく
- 適切なタイミングで顧客にアプローチする
- 対応マニュアルを充実させておく
- 相手の反応を見ながら接客を進める
- 商品の見せ方を工夫する
- トラブルへの対応を用意しておく
- 接客後の改善を欠かさない
導入の目的を明確にして計画を立てる
オンライン接客の導入にはコストがかかります。
『なぜオンライン接客を導入するのか』
この軸がぶれてしまうといざ導入し始めても、利用するスタッフや顧客の混乱を招いてしまうだけという事になりがちです。
『この部分をオンラインに置き換える事で、ここが便利になる』『オンライン接客にすることでコストがいくら削減できる』など、しっかりとオンライン接客を導入する目的を確認し、長期的な目標を定めるところから始めましょう。
利用者側の負担を最小限にする
いくらオンライン接客が便利であっても、利用者の方が『面倒臭い』『難しい』と感じてしまうとそれまでです。
オンライン接客の利用者様が負担にならないようなツールやアプリケーションの用意を行いましょう。
ビデオ通話が重くて動きが止まる…などはもってのほか。
気軽に利用することができるというオンライン接客の強みを潰さないために、はじめの問い合わせに関してはSNSのチャットサービスを利用することなどが大切です。
利用者様が気軽に問い合わせることができ、その後の選択肢の一つとして『オンラインでできる』ことを伝えると負担も少なく更に誘導しやすくなります。
また、オンライン接客中に関しても、実はオンラインで画面を見続けるのは疲れてしまいやすいと言われています。
利用者様の負担を常に考えて、要点をまとめたスピーディーな接客を心掛けましょう。
事前の情報収集を欠かさない
オンラインの導入には大なり小なりコストがかかります。
自社の製品にはどのようなオンラインツールを使うのが有効的であるのかしっかりと分析して、使用するオンラインツールの情報を集めましょう。
例えばズームやスカイプなどのビデオ通話式、ラインなどのチャット式、VRを使用する方法などが考えられます。
また、お客様がオンライン接客を受ける際、ビデオ通話型だと特に事前予約が必要になります。
そのため、事前にアンケートなどをお願いして顧客の情報やなにが欲しいのかを情報を得ておくことが重要です。
顧客の好みやニーズを把握することが次のステップであり、目的である収益につながります。
サービス提供側はツールに慣れ親しんでおく
オンライン接客でうまくお客様が掴めたとしても、サービススタッフがツールに不慣れだと、利益には繋がりません。
これでは、顧客が商品を購入する際の不安材料になってしまったり、タイミングよく適切な操作ができず、購入や提案過程でもたついてしまい、顧客の購買意欲が削がれてしまうことが考えられます。
予め練習やスタッフ同士の共有をして、しっかりとツールに慣れておくこと、スタッフ同士の連携が取れていることが大切です。
また、画面越しにスタッフや商品が顧客にどのようにみえているのかも確認しておくと、自ずとアプローチの方法や仕草、立ち位置などがわかってくるかと思います。
適切なタイミングで顧客にアプローチする
オンライン接客で難しいことは、顧客の視線や商品を気にする仕草など『今この商品について知りたい』というタイミングを見定めることです。
タイミングを逃すと押し売り感が出てしまったり、『もういいや』と顧客が興味を失ってしまい、逆効果にならざるを得ません。
適切なタイミングで的確にアプローチをできることが、顧客の購買意欲にもつながります。
また、オンライン接客は嗅覚や触覚を使用できない代わりに対面接客以上に『視覚』を使います。
そのため、顧客に見せる資料には、パッと目を引くようなカラフルなインパクトのあるスライドなどを使用する事で、興味をひくことも大切です。
対応マニュアルを充実させておく
接客に対するデジタル化はまだ始まったばかりであり、先進的で、顧客もオンライン接客に慣れている方は少ない状態です。
初めてオンライン接客を受ける方も多いでしょう。
そんな中で対応する人で話が違ったり、対応がしどろもどろになってしまうと、顧客はもうオンライン接客を使おうと思わなくなります。
顧客の大切なお金と時間を使って物を購入するので、不信感や不安材料があると今後もオンライン接客の利用者は減ってしまうでしょう。
そのため、店舗側としてはしっかりと接客に関しても、デジタル器材の使い方に関しても、対面接客時以上に強固な対応マニュアルを充実させておく必要があります。
相手の反応を見ながら接客を進める
オンライン上でのデメリットの一つとして、どうしても一人語りになりやすくなるという面があります。
商品のいい所を伝えたい!売りたい!が先行してしまいがちになりますが、顧客とのコミュニケーションを意識して普段の接客以上に『お客様がどんなことを求めているか』を察してオンライン接客を進めましょう。
こまめに顧客に対して問いかけることや、反応を見極めることが重要です。
商品の見せ方を工夫する
オンライン上と現物を比較すると、どうしても若干の誤差が生じることがあります。
色合いや触り心地など、できるだけ実際の店舗で顧客が触れているものに近づけてあげましょう。
言葉での表現の工夫や、照明の明るさ、さまざまな角度から顧客に見えるように動かすなど、オンラインだからこそできる見せ方の工夫が必要になります。
また、触感に関しては、あらかじめ商品のサンプルを送っておくことなども有効戦略です。
トラブルへの対応を用意しておく
オンライン接客では
- 思っていた商品と違う
- デジタル機器が固まってしまって動かない
などのトラブルがつきものであると考えましょう。
事前にトラブルシューティングの予習および練習が必要です。
- Wi-Fiのつながりが悪いのであれば違う電波にスムーズに繋ぎかえることができるようにしておく
- 予備のツールを用意しておく
- 緊急連絡先を伺っておく
など、出来ることはたくさんあります。
また、商品へのクレームが入ってしまった場合に関しては、返品方法や代替品への交換の提案の練習をしておくことなどもできるでしょう。
オンラインでもオフラインでも、トラブルは何をするにもつきものですが、大切なことはトラブルが起きた時に迅速に対処できることです。
接客後の改善を欠かさない
オンライン上でも通常の接客でも言えることですが、接客後は顧客や、他のスタッフからのフィードバックをもらい、次回の接客に繋げましょう。
特に顧客からの意見は宝です。
オンライン接客だと、通常の対面接客以上に、接客後のオンラインアンケートなどに繋げやすいというメリットがあります。
アンケート特典などを利用することで、顧客が意見をあげやすい環境づくりを整えて、改善を欠かさないようにしましょう。
オンライン接客の成功事例
ここまでオンライン接客を成功させるコツを紹介してきました。
ここからは、実際にオンライン接客を導入して事業を成功させている事例を紹介していきます。
ベイクルーズ
ファッション業界の大手であるベイクルーズでは「STAFF START」が導入されたことが話題に上がっています。
これはショップのスタッフ個人個人が、コーディネート投稿などにより自身の販売力を生かしたオンライン接客であり、個人の人気や実績が店舗からの評価になる事で、ショップスタッフのモチベーションにもつながる素晴らしいしくみとなっています。
また、STAFF START利用時はベイクルーズグライブコールというツールでのオンライン接客のため、顧客側はアプリのインストールなどが必要なく、負担もありません。
さらに予約制のため、事前にプロフィールなどから希望スタッフを選ぶことができるので、自分の身長や体型に合った方や、希望ジャンルのコーディネートが得意な方、子育てなどの自分のライフスタイルにあった方なども指定できます。
自分に合った提案をしてくれるため、実店舗に行く以上に自分にマッチした接客を受けられそうですね。
さらに、家にあるアイテムと合わせながらの接客なども可能であるため『あの家にあったアイテムが合うか分からないからとりあえず買おう』という無駄な買い物をする事もなく、賢く買い物ができることも大きなメリットといえそうです。
スワロフスキー
宝石といえばのスワロフスキーでは、『SWAROVSKI ONLINE APPOINTMENT』の導入を2020年の10月から開始しました。
スワロフスキーでは店舗でしか味わえない世界観を大切にしているため、オンライン接客の際も実際に店舗で買い物をしているような雰囲気をできるだけ再現することに重きを置いたオンライン接客を行っています。
例えばどんなものがいいのかなどの聞き取りや商談にすぐに入るのではなく、まずは店舗の外からライブチャットを始める事で、顧客が店に入るワクワク感などを壊さず再現性の高い接客ができます。
なお使用されているツールである『Live Call』はアプリのインストールやIDの登録なども不用なため、デジタル器材に抵抗がある方も簡単に使いこなす事ができるのが特徴です。
公式サイトや公式Lineアカウントからも予約ができる手軽さも人気の秘訣。
また、予約以外にもふらっと店舗に立ち寄れるような即時通話機能も兼ね備えています。
更に導入する側も難しい作業は発生しないため、店舗スタッフの混乱も招きません。
簡単に導入できるからといって、簡素な機能しか持ち合わせていないということもなく、Live Callではオンライン接客画面のカスタマイズができることも特徴です。
ブランドイメージを保った接客ができるのもメリットのひとつと言えるでしょう。
コロナ禍で外出を控える中でも、店舗と変わらない世界観でゆっくりと宝石を選び、接客を受けることができるサービスは、スワロフスキーとLive Callの融合が生んだ先進的なオンライン接客ですね。
花王エスト
花王のプレステージブランド『est』ではLineを使用した仮想接客デジタルサービス「HOME Growing Partner」を2021年1月26日より開始しました。
このサービスではest公式Lineを友達追加する事で、『フィッティングプログラム』と『ラーニングプログラム』という二つのオンラインサービスが受けられる仕組みになっています。
一つ目のフィッティングプログラムでは、対象商品を購入した顧客に対して自宅での日々のスキンケアやお手入れを14日間にわたりHOME Growing Partnerが、サポートしてくれます。
スキンケアの正しいやり方や美容の効果を高めるためのHOW TOを毎日手厚くアドバイスしてくれるので、ただ品物を購入する以上のサービスが受けられます。
二つ目のラーニングプログラムは、3ヶ月間顧客一人一人に合った美容や運動、栄養などの役に立つ情報をお届けしてくれるサービスです。
どちらも魅力的なオンライン接客サービスであり、店舗よりも手軽に知識やサポートが受けられる点が特徴です。
オンライン、オフラインともにブランドとお客様の絆を深める事を大切にしているestは、今後はオンラインカウンセリングやチャットカウンセリングなども充実させていくそうです。
ニトリ
家具メーカーの大手ニトリでは、自宅でリフォームアドバイザーと相談ができるオンライン接客システムの導入が始まりました。
Live Callというツールを使ったオンライン接客は2種類あり、『ショールームでのリモート接客』と『ウェブサイトからの対面リフォーム相談』のどちらも行うことができます。
『ショールームでのリモート接客』では、ショールームに実際に来店されたお客様に対してすぐにご案内できない際に、店舗に設置されたタブレット端末で他のニトリショールームと繋がるシステムです。
これによりお客様をお待たせすることなくスタッフとのやり取りができ、お客様の『今知りたい』に対して素早くアプローチできます。
さらに『ウェブサイトからの対面リフォーム相談』では、自宅に居ながら専門のスタッフにリフォームしたい空間を見せながら相談することができ、採寸やおすすめの配置などを細かく詰めることができます。
東急ハンズ
株式会社東急ハンズでも、LiveCallを利用した新たなデジタルサービスであるオンライン接客を始めました。
自宅に居ながらもビデオ通話サービスで、店舗の専門スタッフに商品の相談をすることができるこのサービスは、現在渋谷店と梅田店の2店舗で導入されています。
特にDIY部門での人気が高く、コロナ禍でのおうち時間を利用した靴や道具の補修などに関しての問い合わせが増えているとのことで、特に梅田店では『シューケアマイスター』の資格を持った専任スタッフなどを配置するなど、オンライン接客にどんどん力を注力しています。
また、接客予約サービスも新たに導入することで、店舗に来店したお客様をスムーズに接客できるようになっており、DX化の取り組みは次々に進化を遂げています。
オンライン接客のコツをつかんで導入を成功させよう
いかがでしたでしょうか?
一見取り入れることにハードルが高そうなオンライン接客ですが、準備とコツさえ押さえてしまえば、これからの時代に即した先進的な接客をすることができます。
デジタル化する社会でどのように店舗を経営していくのか。
オンライン接客が1つの選択肢になってくれることは間違いないでしょう。
メリットやデメリットを十分に理解した上で、オンライン接客の導入を成功させてくださいね。