ホテル業界におけるイノベーションの最前線を行く「ホテルの無人フロント」。
この新しいコンセプトは、テクノロジーの進化と変化する顧客のニーズに応えるために生まれました。
この記事では、無人フロントがホテル業界にどのような変革をもたらしているのか、具体的な事例とともにそのメリットを深掘りしていきます。
ハイテク機器の導入から顧客体験の向上、運営コストの削減まで、無人フロントがもたらす多面的な利点を探求し、未来のホスピタリティ業界の展望を探ります。
ホテルの無人フロントとは
無人ホテルのフロントとは、ホテル内でスタッフの対面対応がない、自動化されたチェックイン・チェックアウトなどのサービスを提供するシステムです。
これらのホテルでは、ロボット端末や受付端末、タブレットなどのテクノロジーを駆使して、宿泊客が自身で手続きを行います。
端末を通して、宿泊客は本人確認を行い、カードキーを受け取ることができます。
無人ホテルの導入による主なメリットには、人件費の削減、従業員や利用者の感染対策、ヒューマンエラーの減少があります。
また、無人ホテルでは、通常のホテルのようなフロントスタッフや運営スタッフの常駐はありませんが、ごく少数のスタッフが緊急時に対応できる体制を整えていることが多いです。
トラブル発生時には、これらのスタッフが迅速に対応するため、完全に無人というわけではありません。
このように、無人ホテルは従来のホテル業界に新しい形態を提供しており、その運営はテクノロジーに大きく依存しています。
ホテルの無人フロントの事例
ここからは実際に無人フロントで運営しているホテルの事例を紹介していきます。
JR東日本ホテルメッツ
JR東日本ホテルメッツでは、遠隔接客サービス「RURA」の導入により、接客品質を維持しながら人員配置の削減と業務効率化を実現しています。
この遠隔接客システムの導入は、新型コロナウイルスの拡大がきっかけとなり、感染防止策の重要性とホテル内の業務効率化の進展が背景にあります。
RURAは、その使い勝手の良さとサポートのしっかりさから選ばれました。
このシステムは、ユーザーインターフェースが圧倒的に優れており、ホテルのスタッフからも高い評価を受けています。
RURAのリモートコントロール機能により、客が自動チェックイン機で何をしているかをタイムロスなく確認でき、必要なときに遠隔操作でサポートが可能になっています。
これにより、お客様が困った場合にすぐに手助けができるようになっており、接客の質を保ちながらも効率化を図ることができています。
実際に、フロントでの接遇業務はRURAを通じて行われており、各チェックイン機の上に設置されたRURAを通じて、来訪されたお客様を出迎えています。
ホテル・ザ・博多テラス
ホテル・ザ・博多テラスは、西日本を中心に無人化・省人化ホテルを企画・運営する株式会社リクリエが展開する無人ホテルです。
このホテルは、宿泊者以外の不正侵入を防ぐためにエレベータ制御システム「TOBIRA」を導入し、無人ホテルの安全性を向上させています。
また、スタッフを現地に常駐させず、自社開発のチェックインシステム「Tabiq」を活用することで、遠隔からカスタマーサービス業務を行い、宿泊者が人目を気にせず快適に過ごせる環境を提供しています。
さらに、Tabiqと連動するスマートロック「RemoteLOCK」を客室に設置し、宿泊者がセルフチェックインを行い、暗証番号を使ってエレベータと客室へのアクセスが可能になっています。
なんば戎ホテル
なんば戎ホテルは、大阪の新今宮に位置し、今宮戎神社の御祭神「えべっさん」をモチーフにしたホテルです。
このホテルは事前チェックインフォーム、セルフチェックイン、IoTロックを導入して省人化を図っていますが、大阪らしい人情味あふれる明るい接客を心がけている点が特徴です。
フロントには4台のタブレットが設置されており、宿泊客自身がチェックインを行うシステムになっています。
このシステムにより、スタッフが1名しかいなくても、最大4組の宿泊客が同時にチェックインを進めることができます。
さらに、夜間のスタッフが不在でも、24時間いつでもチェックイン・チェックアウトが可能です。
また、導入されているスマートロックは、ピンコードの有効期間が予約のチェックイン・チェックアウト時刻に合わせて作成されるため、セキュリティ面でも安心感が高まっています。
和風ゲストハウス ルームス水前寺
和風ゲストハウス ルームス水前寺は、熊本市中央区に位置する無人オペレーション形態の和風ゲストハウスです。
この施設では、玄関に設置されたタブレットを使用してセルフチェックインが行われ、事前に送られた予約コードを入力することでチェックインが完了します。
スマートロック『RemoteLOCK』の解錠キーがタブレット上で提供され、物理的な鍵の持ち歩きが不要です。
無人オペレーションの利点としては、チェックインの手続きが迅速で直感的、さらに手ぶらでチェックアウトが可能な点が挙げられます。
ホテルのフロントを無人化するメリット
ここではホテルのフロントを無人化することによるメリットを紹介していきます。
人件費の削減
無人ホテルでは、フロントやその他の対面サービスに関わる人員を削減することができます。
これにより、ホテル側は人件費を大幅に抑制することが可能になり、結果的にホテルの収益性の向上につながります。
感染症対策の強化
新型コロナウイルスの流行に伴い、非接触・非対面のサービスへの需要が高まっています。
無人フロントを導入することで、従業員とゲスト間の直接的な接触を減らすことができ、感染リスクを低減します。
これは、特に感染症が懸念される時期において、大きな利点となります。
ヒューマンエラーの減少
フロント業務を自動化することで、人的ミスが減少します。
例えば、チェックインの際のデータ入力ミスや、客室割り当ての誤りなどが減り、サービスの全体的な質を向上させることができます。
これにより、ゲストの満足度を高めることが可能になります。
フロントを無人化するデメリットとその対策
メリットを紹介したところで、今度はデメリットとその対策について解説していきます。
ホスピタリティの欠如
無人のフロントの場合は基本的に利用者のチェックインやチェックアウトも機械で行うようになります。
お客様が機械の使い方がわからないとなった場合の対応の遅れや窓口がないことでホスリテリティの欠如と捉えられてしまう場合があります。
しかし、RURAのような実際にスタッフが遠隔地からサポートしてくれるサービスと連携させることで、ホスピタリティも維持することが可能です。
導入・運用コスト
無人ホテルの導入ではチェックイン・アウトシステムやスマートキーシステムにある程度の初期投資が必要であり、日々の電気代や定期的なメンテナンス費用も発生しますが、長期的には人件費の削減によりこれらのコストを回収でき、さらに定期的なメンテナンスとアップデートによりシステムの運用効率を高めてトラブルを未然に防ぐことが可能です。
問い合わせ対応の必要性
無人ホテルでは、宿泊客の疑問やトラブルに対応するために電話サポートスタッフが必要というデメリットがありますが、これに対してはメールやSNSなどの電話以外の通信手段を活用し、より幅広い顧客対応を可能にするとともに、ウェブサイトによくある質問を掲載して自助サポートを充実させることが有効な対応策です。
ホテルのフロントを無人化して接客体験を向上させよう
この記事を通じて、無人フロントがホテル業界にもたらす革新的な可能性を探りました。
技術の進歩により、無人フロントは単にコスト削減の手段ではなく、顧客体験を根本から変える力を持っています。
自動化されたプロセスはチェックインからチェックアウトまでスムーズに進行し、顧客にはより個人化された体験と柔軟性が提供されます。
また、オンラインサポートやインタラクティブなサービスによって、顧客のニーズに迅速かつ効率的に対応することが可能です。
無人フロントの導入は、顧客満足度を高め、業界全体のサービス水準を引き上げる新たなステップとなり得るのです。
これからのホスピタリティ業界では、無人フロントが重要な役割を担い、持続可能な運営と顧客体験の向上の両方を実現する鍵となるでしょう。